SDGs(持続可能な開発目標=Sustainable Development Goals)に取り組む企業が増えている。というより、いまや企業経営にSDGsは欠かせなくなってきているといったほうが正しいかもしれない。
SDGsにある「17の目標」には、平和や貧困、地球環境などのキーワードがあるが、それらは企業活動を続けるうえでも無視できなくなってきている。企業のSDGsの取り組み促進を提唱する、伊藤園顧問の笹谷秀光氏は「2019年はSDGs元年」という。シリーズSDGs【企業編】のトップバッター、笹谷氏とSDGsへの理解を深めながら、企業の役割を確認したい。
「17の目標」を分解して理解する
―― SDGs、持続可能な開発目標と聞くと、なにやら難しく感じます。どのようなことなのでしょうか。
笹谷秀光氏「『開発』と聞くと、発展途上国のインフラ整備のようなイメージを抱きがちで、イメージが湧きにくくなっているのですが、まろやかに言えば、社会や環境の課題に対して、どのように持続可能な価値観を見いだしていくか。換言すれば、『持続可能な未来づくり』というふうにとらえていただければよいと思います。
そのためのやるべきことのリストを国連の場で、193の国と地域が侃々諤々、2013~15年まで3年もかけて議論して定めたものです。『持続可能な社会づくりのための共通言語』、羅針盤のようなものだと思っていただけるとわかりやすいと思います」
―― 「17の目標」を定めています。平和や環境といったキーワードがありますが、どこか「今さら」といった感じがあります。それは企業が利益に目を奪われ、なんら対策をとってこなかったから、今なにかをすべきということなのでしょうか。
笹谷氏「それはですね、古くは1987年頃、『サステナブル・ディベロップメント(持続可能な開発)』で、持続可能性ということが初めて提唱されたことに端を発します。世の中の持続可能性を考えないとよろしくないのではないかということで、ずっと議論してきましたので、おっしゃるように『今さら』という感じを持たれる方が多いんですね。
まだ世界には複雑な課題を抱えている国々もあるし、日本でも先進国特有の課題を抱えているので、改めて洗い出されて、集大成がされたとみていただければいいと思います」
―― 「17の目標」項目を、どのように理解すればいいのでしょう。
笹谷氏「17個の項目を学んでいくには、構造で理解していくのがいいですね。『5つのP』で集約されています。これは国連で現下の地球上の課題を、すべてを洗い出してみたら、『5つのP』の項目が危機に瀕していることがわかりました。
その一つ目が『People』です。人間は元気か、大丈夫か。2番目が『Prosperity』。人類の繁栄が今後も続くだろうか。3番目が『Planet』。地球は元気か、大丈夫か。4番目は『peace』。平和は確保できているか。5番目は『partnership』。みんなの連携は大丈夫だろうかと。
逆に言えば、この5つが危ないぞ、いよいよもってなんとかしなければならないという結論になり、その『5つのP』それぞれに、何をやれば危機から脱することができるのかを整理しました。2015年にでき上りましたが、そこに長期的な視点を加えて2030年を目標にしたんですね。そのぐらいのスパンで考えた時に、この『5つのP』を確保するにはどうすればよいのかを集約しています」